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木藤文斗。彼は黒い服のなか、紺のブレザーと臙脂のネクタイでそこに座っていた。
目の前には大きな少女の写真が貼られている。
森井礼実はそこで微笑んでいた。とても儚い笑顔で。
式が終わり、多くが家や仕事場に帰る中、文斗は火葬場に向かうマイクロバスの中にいた。
もうすぐ、大好きだった礼実の躯が骨になってしまう。
ただ、これからあることに冷静な自分に文斗は叱責した。
―俺は彼女の死にすら涙を流せない薄情ものなのか―
と
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