キャベツの告白

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手がある、足がある、口がある。 僕は人間になった。 どうしても、伝えなくてはならなかった。 ある日、悪魔がやって来て、冷蔵庫の僕に言った。 「人間になりたいか?」 と、聞いてきた。 「なりたい。」 僕はそう言った。 嬉しかった。人間になって、あの人に思いを伝えられる。 「期限は0時だ。」 そう言って、悪魔は去って行った。 「何から伝えよう?」 もどかしい。 言葉だけでは足りなかった。 「僕はキャベツです。あなたに食べてもらいたい。」 違う。 「あなたに食べてもらえれば、僕は幸せです。」 これも違う。 あっあれは、あの人だ!! 「大丈夫。落ち着いて。今日しかないんだ。」 僕の内に眠る、最大限の勇気を余すこと無く振り絞って、 「僕はキャベツです。あなたが好きです。」 鐘がなった。 「食べてくれたら、幸せです。」 男は、私にそう言うと。姿が薄くなって、しだいに消えていった。 「今なら分かる気がする。」 私は、そう思いながら、冷蔵庫の腐ったキャベツを見ていた。
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