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「お付き合いしてる人がいたんだけどね、昨日プロポーズされて了解しちゃった」
薬指の指輪を見せる母さん。俺と日向は口々に祝杯の言葉を述べる。
なんで転校なのか早く聞きたいが、苦労してきた母さんが幸せになるのは子どもとして嬉しい。
日向も同じ気持ちなんだろう、凄く微笑んだ顔で何度も「おめでとう」と言っていた。
しかし母さんは口下手だから一向に理由が出てこない。
「で、俺と日向は何で転校?」
「…っあ、ごめんね。健さん、新しくお父さんになる人がね、海外に出張になっちゃって」
要約すると、新しく父さんになる奴が海外出張だから、母さんは付いて行くらしい。
2人だけを家に残すわけには行かない。そう思った母さんだったが
偶然にも新しく父さんになる奴の従兄弟が学園を経営しているらしく、そこに2人を通わせたら安心と言うわけだ。
……なんて都合がいい話だ。
「まだ、高校通い始めたばっかりなのにそれでもか? 」
責めるように言えば、母さんは黙った。だが若干瞳が潤ってきている。
……母さんの涙には俺も日向も弱いんだよなぁ。日向に視線だけで投げかけると、やはり日向も同じ事を思ったらしく目があった。
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