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日向に特に焦りはない。というか焦って冷静さを無くす方が愚かだと思うのだ。
「一緒に来てください」
「………お断りします。兄から『知らない奴にはついていくな』と言われてるので」
日向はにっこり笑いかけながら周りを見る。後ろはトイレ、前に逃げ出すには多少手荒な真似が必要かもしれない。
相手を甘くは見ない。何故なら自分は女だということを日向はよく知っていた。
頭の中で退路を確認して足を一歩踏み出す。
その時だった。
「おい!其処で何してる!!」
「ヤバい。副会長だ。………あなたの兄にも伝えておいて下さい、"後日お話ししましょう"と」
副会長の声を聞いて朝飛のお客さんはそう言って去って行った。
すぐに走って来たのは、黒髪短髪の食堂で見た副会長と呼ばれる人物だった。
「大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます、副会長さん。何か変な人に追いかけられちゃって」
「……?ああ、お前転校生か」
それは大変だったなと
柔らかく頭を撫でられた。確かに副会長よりは背は低いけれど、高校生によしよしと頭を撫でるのは。
向こうはいいかもしれないけどこっちが恥ずかしい。
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