4人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい緒方」
それにほら、こうやって。
「英喜ちゃんになにか用ですかいっ?」
時々呼んでもらえるわけだし。
「暇ならこのプリント、刷るの手伝え」
お、なんか良いんでない?
お手伝いって響き、なんか特別っぽくて。
「終わったらなんかご褒美くれる?」
「欲しいならくれてやるからさっさとしろ」
「へいへい」
ちょいしくじった?
だってさ、数学の特別問題集とか出されたら、ちょっと厳しいんですけど。
普通にやってくれそうじゃない?
ドサドサッって。
コピー機の音だけやけに響いて、黙々とノーパソのディスプレイばっか見てるあの人の邪魔になるんじゃないかって、ちょっと思った。
沈黙は別に、気にならない。
多少それが長引いたって。
だって、会話がある方がまれだから。
なるべくなら声聴いてたいと思うし、下手なこと言ってバカバカ言われるのも平気だけど、時々の会話でもあるだけ満足。
なんかオレ、めっちゃ健気。
涙が出ちゃう? 男の子なのに。
これで全部かな?
機械が吐き出し終えた紙の束をまとめて、おっさんの机まで運ぶ。
「はい、いっちょ上がりぃ」
「あぁ」
パラパラと刷り上ったプリントに目通してる姿も様になるんだよね。
「バカでもこれくらいの仕事はできたか」
「ちょっとおっさん、ご褒美ってまさかその嫌味じゃないよねぇ?」
別にそれでもいいんだけど。
だって今、会話になってる。
「そうせっつくな」
え、なに??
「マジでくれんの?」
普通に冗談だと思ってたのに。
お茶請けのお菓子でもくれるつもり??
不意におっさんが立ち上がって、やっぱでけぇなって見上げてる内に。
「え、…ッ…」
息が、できなくなった。
いや、息もできないくらい…とか言う比喩でなく、物理的に呼吸困難。
っていうか…。
なにが起きてんだよ!?
最初のコメントを投稿しよう!