であい、デアイ、出会い。

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「――ん、どうやら着くみたいね。さてと、まずは何からしようかしらね」 「……案内、するわ」 「案内もそうだけど、それより『友達』として一緒に楽しまないとね」  二美の言葉に、最初私は反応を返す事が出来なかった。  いや、正確には理解が追い付かなかったのだ。  友達……よく耳にする言葉と共に、私には一番縁遠い言葉であった。  およそ親子や友達と言った人との繋がりを表す言葉に好かれていないらしい私は、はっきりと覚えている中学生の時でも、その言葉を聞いた記憶はない。  バスが繁華街に程近い停留所に停まる。次々と乗客が降りていく中、いまだ固まったままの私を訝しみながらも、二美は半ば強引に手を握り席を立った。 「私の街案内、任せたわよ?」 「…………うん」  胸に去来する暖かさと鈍痛に意識を朦朧としながらも、私はしっかりと頷いた。  友達の為に、初めて好きになった人の為に。  他人と自分を嫌う性根の曲がった性格は、今しばらく隠しておこうと思った――
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