第七章 ソラとリュウザン(前編)

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戦場に舞う一輪の花。 それは天より降りし天使と思わせ、その実悪魔的大胆差を合わせ持つ。 悠々堂々と構える彼女の持つ証は絶対の勝利。 故に…… 「常勝将軍!?」 と呼ばれている。 「見張りは二人だけか?…ええーい!貴公らでは役不足だ!指揮官を出せぇっ!!」 彼女が叫ぶ。 それは高くもなく、低くもなく、それでいて透き通るようで気品のある声。 常勝将軍と呼ばれる彼女は、カラミアの王女シュール=セイラ=カラミアである。 見張りの一人が奥に引っ込む。 それと同時に今の叫びで、ぞくぞくと兵士が集まる。 それでも砦の塀に立つ彼女は悠然と構えていた。 やがて弓兵の何人かが、至近距離から…距離にして2~3mの位置から矢を放つ。 シュッ! それもたった一降りで終わる。 しかも抜かれた剣は腰にある鞘に確り収まっていた。 つまり、目にも止まらぬ一瞬だったのだ。 それだけで全て矢を弾く。 「……だから貴公らでは役不足と言っておろう」 静に言い放つ。 しかし、その瞳はタカのような眼光を放つ。 相手を威圧する鋭きもの。 兵達が一瞬たじろぐ。 …………… 砦の指揮官ホリスは、傍らにいる女に酒を注がせ余裕寂々といった面持ちで構えていた。 そのホリスに、目の前に立つ兵が進言する。 「本当に正面を手薄にして宜しいのですか?」 「正面から突っ込んでくる馬鹿がどこいる?イクタベーレの王子の率いる反乱軍のなど、こそこそ裏からやって来るに決まっておろう」 「ですが……」 「それに俺は本国から直々に赴いた歴戦の……」 バーンっ! 指揮官の言葉を遮るかのように、この部屋の扉が大きく開かれる。 「た、大変です!!」 「何事だ!?」 ホリスが叫ぶ。 「反乱軍が正面から……しかもたった一人で……」 「ば、馬鹿なっ!」 パリーン! 手に持つ酒が注がれたグラスが握り割られた。 …………… 「貴様は常勝将軍!?反乱軍に与していたのは本当だったのだな」 セイラの前に現れたホリスが叫ぶ。 「貴公が此処のリーダーか?」 「貴様ら一体何を考えておる?馬鹿正直に正面から……しかも一人で」 セイラが不適に笑う。 まるでホリスを見下すかのように……。 「イクタベーレはアイル王子の領地……其処に何の遠慮がいるのだ?」 「ぬかしたな!俺は本国より直々に赴いた歴戦の……」 プシューン!! 決着の幕は一瞬で下ろされた。 一気に距離を詰めたセイラが華麗なる剣捌きでホリスを斬り倒していたのだ。
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