19人が本棚に入れています
本棚に追加
砦の屋上で景色を満喫するアイルの姿があった。
其処にジャイロがやって来る。
「アイル様!捕虜の方はどう致しますか?」
あの後……セイラが指揮官を倒した後、ほとんど兵達が投降してきた。
アイル達が突入した瞬間にこの状況だ。
アイルも流石に此処までやるとは思っていなかった。
セイラはシャルス城の一件で病み上がりなのだ。
にも関わらずとアイルは心底驚いた。
「戦意がない者は解放してあげてくれ」
「そう仰ると思っていました」
ジャイロは苦笑を浮かべ、また直ぐに真顔に戻る。
「……しかし、我々の動向が漏れますよ」
「良いんだ。どのみち直ぐに知られる事だよ」
アイルは微笑を浮かべ再び屋上から見える景色に視線を戻した。
「帰って…来たんですね……」
「ああ……だが此処は所詮イクタベーレ城が完全当地している場所にしかならない……私の城はまだもう少し先だ」
と言いつつもアイルは懐かしさを感じていた……二年ぶりの故国に……。
(そう……帰ってきたんだ。それなのに……)
しかし、アイルは大きな悩みの種が一つあった。
アイルをの視線が下にいく……悩みの種が“いる”下へ……。
ジャイロもそれに気付く。
彼もイクタベーレ騎士団団長として頭を抱えずにはいられない。
彼等の視線の先……。
「てめぇ何を考えていやがる!?」
胸ぐらを掴み壁に叩き付けるイスカがいた。
それと……
「どういうつもりだソラ!てめぇの部隊は裏手口から進入し、挟み撃ちにする作戦だった筈だ!!」
イスカが怒鳴り付けられるソラが……。
そう……実はアイルは一応戦略を立てていた。
ただ“期待できない”策を……。
こうなる事もわかっていた。
だが、アイルは彼を信じたかったのだ。
それは願いに近いものかもしれない。
彼はイクタベーレ陥落時からずっと一緒に戦ってきた“仲間”。
その仲間をこのままにしたくないのだ。
「なのに何故動かなかった!?」
なおもイスカの罵声が響く。
「……この程度の砦なら、そこまでしなくとも楽に落とせると思った」
何かに取り付かれかのような虚ろいだ目で答える。
そして決してイスカと視線を合わせない。
「確かにセイラがほとんどカタを付けた……だがよ、ふざけんなよ…理由になるかよっ!そんな事……おかしいぞ近頃のお前…リュウザンの事があってから……!」
ビクッ!
とソラは一瞬だけ反応した。
たが直ぐに何かに取り付かれたような虚ろな瞳に戻ってしまう……。
最初のコメントを投稿しよう!