第七章 ソラとリュウザン(前編)

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「痛かったですよーアイル王子ー」 そんな中で半泣き状態で自分の肩を揉んでいるミオ。 「あっ……ああ…すまない。取り乱してしまった」 「でもよーそれが本当だとしてだ。この場にリュウザンはいないわけだろ?」 とシオン。 「……現状は変わってないな」 とゼフィロスが繋げる。 アイルは皆に視線を移す。 「ああ…さっきも言おうとしたが、これがソラに取って最後のチャンスだ」 とアイルは言いつつも、彼の“本心”は違った。 皆を納得させる為にあえて、そう言ったに過ぎない。 「その最後のチャンスで隊が全滅を喰らったら、堪ったもんじゃない」 と今度はサラが返す。 「ああ…だから、其処でミオの出番だ」 と言ってミオに向き直した。 「えっ!?あたし?」 ミオは突拍子もなく振られ驚く。 「うん」 アイルが微笑む。 「え、え~っと…私は何をすれば…良いのでしょうか?」 「ソラに気づれぬように、彼の監視…それをお願いする為に、この会議に呼んだんだ」 「はぁ…」 「異論はありますか?セイラ王女」 アイルはセイラ王女に向き直す。 「本人に一任する」 と簡素答える。 「ありがとうございます」 (自分も王族なんだから私に気を使うな) 胸中ゴチるセイラ。 またアイルは再びミオに向き直す。 「どうかな?頼める?」 「え~…なんで私なんですか?」 「それは君にしかできないから……いや、信頼できる君にしか頼めないからだよ」 手をミオの肩にポンと置き、にんまり微笑む。 「そうですか……了解致しました。アイル王子の期待に添えられるよう奮闘させて頂きます」 満面な笑みを浮かべ、敬礼をする。 「ありがとう……では、早速行って来てくれ」 「はっ!」 そしてミオは退室した。 (扱い易い人で良かった) と胸中呟いたアイルは再び皆に向き直す。 「これで異論はないよね?」 「ああ」 代表でシオンが答える。 これで話がまとまろうとしていた。 「……気を使ってるのか?」 しかし、セイラが水をさす。 アイルの方を向かずに呟く。 「えっ!?」 「チカに気を使っているのか?」 セイラが言い直した。 「お見通しですねセイラ王女……それもありますが、彼女を信頼しているのも事実です」 ミオの相棒チカは模範戦の時にジェリドに射抜かれ、まだ本調子ではない事をアイルは知っていた。 「そうか……すまない」 と言いながらセイラは薄く微笑んでいた。
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