0人が本棚に入れています
本棚に追加
アイスクリーム
「姉ちゃーん、コンビニ行ってくるけど、何か買ってくるものあるー?」
マンションの狭い玄関から、サンダルをひっかけつつ、台所に立つ女性に声をかける。
女性は手を洗ってタオルで拭いながら玄関までやってきた。
「甘いもの!」
「……具体的には?」
その何処かズレた一言に笑いながら聞いてやれば、彼女は顎に指をあてながら「んー…」と数秒思案する。
そして次の瞬間には、つらつらと形の良い唇から出て来る言葉の羅列に瞠目した。
「ケーキ食べたいなぁ。暑いからアイスも。あ、和風ものも食べたいから大福も。あとクッキーと、板チョコとポテチも食べたいし、飲み物はミルクティーかな?」
「ちょ、ちょっと多すぎない?」
「そう?」
私の引きつった笑いも、姉ちゃんののほほんとした微笑みに勝ち目はなかった。
「買ってきます…」
行く前から疲れたように、肩を落としながら玄関を潜って外に出る。
夕方の生温い風が頬を打った。
最初のコメントを投稿しよう!