アイスクリーム

1/2
前へ
/20ページ
次へ

アイスクリーム

「姉ちゃーん、コンビニ行ってくるけど、何か買ってくるものあるー?」 マンションの狭い玄関から、サンダルをひっかけつつ、台所に立つ女性に声をかける。 女性は手を洗ってタオルで拭いながら玄関までやってきた。 「甘いもの!」 「……具体的には?」 その何処かズレた一言に笑いながら聞いてやれば、彼女は顎に指をあてながら「んー…」と数秒思案する。 そして次の瞬間には、つらつらと形の良い唇から出て来る言葉の羅列に瞠目した。 「ケーキ食べたいなぁ。暑いからアイスも。あ、和風ものも食べたいから大福も。あとクッキーと、板チョコとポテチも食べたいし、飲み物はミルクティーかな?」 「ちょ、ちょっと多すぎない?」 「そう?」 私の引きつった笑いも、姉ちゃんののほほんとした微笑みに勝ち目はなかった。 「買ってきます…」 行く前から疲れたように、肩を落としながら玄関を潜って外に出る。 夕方の生温い風が頬を打った。  
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加