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痛い。
可笑しい、あの痛みからは解放されたはずだ。なのに肌を刺すようなこの痛みは何だ。いたいいたいいたい
「寒い。」
睫を震わせて、瞼を開けた。
ぱちり、ぱちり。
瞬きを繰り返す。
吐いた息は白く揺らいで視界を覆う。
身体をべったりとくっつけた地面に踏ん張って、腕の力で上体を起こした。
頬に付いた雪が、はらりと地面に落ちて姿を隠す。
「ここ、どこ、」
立ち上がっても、一面限りの白い世界。
立体さえも解らないほどの白。
私は死んだはずだ。
なのにどうして、身体に体温があって、天国には相当見えない極寒の銀世界に居るのか
じゃあ生きている?
だとしても、あるはずの傷も綺麗さっぱり無くなっているし、此処に立っている理屈も説明できない。
それに、
どうして私の身体はこんなに小さくて地面が近くて、視界にチラチラと揺れるくすんだ金髪の髪は―、
わたしは、生まれ変わったんだろうか。
「寒い。」
呟いた言葉は、今度は声にならずに白い息になって空気に溶けた。
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