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ー何が起きているのだろう?
更夜は二年も前の話を思い出していた。
目の前には白い蛇の様な、何かが光りながら渦巻いている。
妙に肌寒く、更夜は首を動かして節々の痛む身体を見渡した。
上半身は着ていたコートが無く、服が破れて下着姿も同然だった。
目を凝らせば遠くにはワインレッドの光を放つ蛇が渦巻いている。
ーこれは魔贈獣だ。
更夜は直感でそう理解した。
蛇は何なのか分からない。
ふと、血の臭いがして更夜は横を向いた。
蛇達から漏れた微かな光で分かったのは、気を失ったシドの姿だった。
「シ…!」
更夜は声を上げようとしたがそれは阻まれた。
喉が焼ける様に痛い。
腹に刺激痛がして唸り声を上げると、背後から何かに抱き止められた。
「更夜様」
聞き慣れた声に目を凝らせば、ヘブの顔が微かに見えた。。
彼の顔は心なしか青い。
「大丈夫ですよ」
彼は更夜を抱き締めた。
ただ身体が痛かった。彼の髪が更夜の頬を掠め、少しばかり安心したのは気のせいではない。
「行け、魔贈獣」
誰かの声がした。
するとワインレッドの蛇が雄叫びを上げた。
更夜はそこで瞳を閉じ、自分の記憶を辿った。
何が起きたのか、何が起きているのか、更夜は静かに思考を巡らせた。
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