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更夜が妖魔達に案内されたのは、水の音だけが響く場所だった。
「貴女が妖魔の母親ですね?」
その場所の生臭さに更夜は顔を歪めた。
目の前の女は何も言わない。
唯一、女は人ではない、というのが分かった。
灰色に似た蛇の様な皮がある。
そして周りには妖魔のだろうか、卵の殻が転がっていた。
「やっぱり、卵だったんですね」
更夜は言ったがやはり女は何も言わなかった。
「犯された…訳じゃないみたいですね」
更夜が呟くと妖魔の一人が更夜に襲い掛かった。
「賽空地(さいくうち)!」
更夜は妖魔に向け腕を伸ばし叫んだ。
するとその妖魔は動きを止めた。
「早く何か言え。ゴーレムを奪われて私は気が立っている…」
更夜はそう低く言った。
実際、更夜の気は立っている。
それはヘブがいないという理由もあるが、何よりも原因なのは自分だった。
というのも、更夜の心臓が先程から痛かったからだ。
発作が起きるのだろうと、更夜は冷静に考えていたが発作を抑える薬は飲めなかった。
「あら、分かってたの」
女は無表情のまま言い放った。
「あぁ。早くヘブラスカを返してもらおう。
他の奴等もだ。返せ」
「嫌よ。私の家族を殺す奴を逃がすもんですか…」
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