魔贈獣の姿

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女が言うと、突然背中に衝撃が走り更夜は飛ばされた。 魔法で光を点けていたので地に手を付いた所で暗闇に戻った。 倒れた更夜が振り向くと、妖魔が見下ろしているのが分かる。 「お前は私の息子達を殺した。 殺さないだけ感謝なさい」 女は目をむき出して言った。 始めて見た感情のある顔が余りに恐ろしく、更夜は一瞬たじろいだ。 「かあさま、りゅう」 「えぇ。良いわよ」 女が言った途端、女の髪が一瞬で伸び、更夜の両腕に巻き付いた。 妖魔の一匹が動きの取れない更夜に近付いてくるのが分かる。 「咲宮!」 更夜のペンダントから翁雀が現れ更夜を抱き締めた。 次の瞬間、キクも現れ妖魔の顔の前で羽ばたいた。 暗闇の中でも分かる程、キクの身体は禿げている。 「あら、使令?」 女は言ったが、更夜は耳を貸す事は無かった。 翁雀が更夜の左腕の髪を爪で切った。 「無舞花、発動!」 左腕を胸に当て更夜は叫んだ。 同時に右腕の髪も翁雀により外された。 他の妖魔が襲って来るのが水の音で分かった。 ブーツに魔力石を埋め込み、更夜は走った。 「キク!」 更夜が叫ぶとキクは高く舞い上がった。 身体が一気に大きくなり、更夜達の下へと帰ってくる。 更夜はその翼に手を掛けた。 宙から邪魔な妖魔を蹴り上げれば、悲鳴が上がった。 「今です!」 更夜が叫ぶと、水が激しく揺れた。 更夜は固く目を瞑った。翁雀も、更夜を抱え込んだまま目を瞑る。 「水面月(みなもづき)!!」 男の声がした。 瞬間、光が空間を包み込んだ。
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