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「あったぞ…」
仮面は水に浸る場所のある一点を指した。
そこには岩があるだけで陣らしい物は書いていない。
ヘブが不思議そうに仮面を伺うと、彼は腕を払った。
すると岩に炎が点いた。
その炎に炙られ、赤い陣が現れた。
「消せば戻れるのか?」
そう問い掛けたのはガクだった。
「こちらから消しても壁は消えない。向こうにも伝えなければな。
この陣を消せば向こうからこちらに来れる」
「なら根本的な解決になってないんじゃ…」
ヘブが不安そうに言うと彼はいいや、と呟いた。
「公主は竜だ。竜なら竜の声が分かる」
彼は言うとガクを見た。
「歌えるな、ガク」
彼は静かに言った。
「え?」
ヘブがガクを見てそう呟いた。
クルーラーもガクを見て彼の言葉を待っている様だった。
「…幾つ?」
「陣の場所一つ。
聞こえる範囲かは賭けだ」
「分かった」
ガクは言うと目を閉じた。
深呼吸を一度して、口を開くとやけに肌寒い風が身体に吹き付けた。
「愛しきガクヤ
小さな手で 握っておくれ
愛しきガクヤ
奏でる声を 教えてあげよう
希望を抱け 眠る坊やよ
お前の声は 未来の証
幸せになれ 二人の坊や
お前の歌に 愛を奏でよう」
今まで聴いた事のない子守歌だった。
何故彼が突然歌を歌ったのか、ヘブもクルーラーも分からなかった。
ガクは歌い終わると仮面を見た。
仮面は耳に手を当てている。
どうやら向こうの声を探している様だった。
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