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ーなぜみんなわらうのだろうー
少女はそう思った。
痛みは少女の小さな身体全体を脈打つ様に襲う。
「いたい…」
少女が言うと、その痛みは更に増した。
「なんでなぐるの?」
大人達に問い掛けても答えをくれはしなかった。
その代わりに話し掛けるな、と頭を捕まれ、外に追い出されるのだ。もう数日は、食事をしていない。
夜、空腹で目を覚ました少女は大人達の声を聞いた。
「他の施設に回しましょう?」
「こんな時代に、潰れてもいない施設の子どもを受け入れる所なんて無いわ。
しかもあんなのー」
少女は小さな声に耳を傾けた。
少女は昔、東にある町で籠に容れられていたらしい。
「早く死んでくれればいいのに」
「いっその事、毒を飲ませましょうよ」
「あの子は頭がいいわ。すぐに気付いてしまうわよ。
ーそれに毒で死なないかも」
少女はもっと聞こえる様に耳を扉に当てた。生まれてからまだ四年しか経っていなかったけれど、何の話か気付いてしまったのだ。
「なに、人の致死量の倍を飲ませればいくらなんでも死ぬわよ。第一、肺が悪いし、大丈夫よ。
もう寝ましょう」
本当は笑われる理由も、嫌われる理由も、殴られる理由も、殺される理由さえ少女は分かっていた。
少女は大人達が来るのが分かって、急いで扉から離れた。
ーはやく、にげなきゃー
少女はそう自分に言い聞かせた。
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