【side parts】

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「――――え? ちょっと薫ちゃん?」  いきなりぶちりと電話が切れた。蓮華はいきなりのことで唖然としている。何かあったのかと思考を巡らせるが、未だにこの協会の地理は完全に把握出来ておらず。場所にたどり着けるかどうかすら危うい。 (全く事情ぐらい話してくれてもいいのに)  心内で愚痴を放つ。それはなんにもならないことは分かっていたが、それでも愚痴らないとこのストレス社会ではやっていけないらしい。 「本当にどうしましょう」  蓮華は右差し指を顎に添えて、生徒達が休憩しているテントを眺める。 (とりあえず、人様に尋ねてみるのが妥当性がありますよね。あらあら、それならどうしましょうか。生徒さんに聞いた方が詳しいのか、それともお忙しい教師の方々の方が優しく教えてくださるのか)  またしても長考に入るか、一向に解決の兆しは見えない。そして、蓮華は携帯端末のディスプレイを観ると、 (11時44分。お昼は12時からだから、もうすぐですね)  蓮華は余計に焦った。携帯端末を持つ右手と逆に握られた、いまどきいないだろうと思われる風呂敷に包まれた重箱が虚し気に肩と腕に負担を掛ける。一体どうすればいいのか分からずに光陰矢の如しで時間だけが過ぎていく蓮華にあるものが目に映った。  蓮華は駆け足でその方向に走る。自然と足取りも軽かったようだ。
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