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蓮華が向かった先。
それは小さなテントだった。
教室から運ばれたであろう最新式の異様に湾曲した椅子にその短い脚を重ねているツインテールの女子生徒がいた。
蓮華が真っ先に目が行ったのは体操服のゼッケン。
只今、『情華祭』中には生徒皆、当然体操服とともにゼッケンの着用が義務付けられている。
これがないと一部を除くの競技に出られないことは勿論。
『情華祭』の参加が不可能となる。
またこのゼッケンには当然ながらクラス、学年・名前と記入されてあり、蓮華が注目した点を更に絞ると、名前だ。
それも、特定の名前。
「椿山さんですか?」
「はい? そうですよ。何かお困りでしょうか?」
「いや、ちょっと困ってはいるんですが。あの、もしかして薫ちゃ……、いや薫さんのご親族の方でしょうか?」
女子生徒こと陽南はキョトンとした顔で、
「あれれ? お兄ちゃんと知り合いなの」
と蓮華に聞いた。
蓮華は思わず安藤の息を洩らす。
(ほ……。よかった。名字が一緒だったから、聞いてみて正解でした)
いつもの朗らかな表情が尚更弛んだような顔で、蓮華は答えた。
「あ、はい。薫ちゃ、薫さんとは、え……となんでしょう」
思わず言葉を詰まらせる。
流石に魔導機械を通して知り合いました、なんて言える訳がないし。
仕方ないから強ち間違いでもない感じで返答してみることにした。
「薫さんのクラスメートのお姉さんです。一度なんかの拍子に会ったことがあって」
「お姉さんねぇ。ところで困ってることって何?」
とりあえず納得してくれて良かった。蓮華は胸をなで下ろすと、自分の現状を脳内で整理して、簡潔に割愛して話すことにする。
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