【side parts】

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「――――で、その棗さんとやらを探してるんだね? 解りました陽南に任せて」  頼もしい言葉が返ってきて、蓮華はこれで見つかるかも、と希望の光が見えてきた。目の前の女子生徒陽南も胸に手を当てて、自信満々だ。 「それにもう直ぐお弁当だから、私もお兄ちゃんを探さないといけないし。大体お兄ちゃんも使えないよね。迷子を探してる途中で本人が迷子って。ウケ狙いかってね」  直接飲むタイプの水筒に口をつけた陽南はグイグイとお茶を口に含むとぷはーと、女子生徒とは思えないおっさんらしい声を吐き出してくれて、蓮華も思わず顔が引きつる。  蓮華は左手に握られた重箱に目をやる。そして、ふふと微笑した。 (これでやっと棗ちゃんとお弁当が食べれます。棗ちゃんと大協会聖域でお弁当なんて、夢みたいですよ。だって、今まであの娘そんな余裕なかったですしね)  5段にも重ねた重箱の重みも今では苦にならない。だって、もう直ぐ逢えるかも知れないのだから。  蓮華は自然と顔が綻んでいることに気づいて、少し恥ずかしくなり、焦るように陽南に言葉を送る。 「本当にごめんなさいね。競技で疲れてるでしょうに」 「いえいえ、全然お構いなく。陽南もお兄ちゃん探さないといけないんで」  謙虚に手を振り微笑む陽南に。蓮華は、さすが薫ちゃんの妹さんだわ。とても礼儀正しい正しい上にこんなに可愛いもの。と大絶賛を心で送る。  しかし、陽南は事の本人(かおる)が見つかったら本人に何か見返りも求めるという腹黒い計画を立てていることなど知りもしない。       陽南のガイドの下、蓮華は第二裏門へと向かう。現在地だったstep2の休憩用テントを跡にし、救護テントの角を曲がるも、距離はまだまだある。  だだでさえだだっ広いこの『大協会聖域』の敷地を通り抜ける手前まで行こうってんだから無理もないのだが、 (薫ちゃん結構走ったんですね。いやはや悪いことさせちゃいました)  蓮華は自分が歩いて来た道のりを振り返るが、既に曲がり角や距離があり、もう出発地点は見えない。  日々のインドアの成果の運動不足で痛む足腰を蓮華は手でさすりながら、まったりと陽南についていく。  陽南を見る限り、全く足取りは変わらず、さすがに若いと体力が有り余ってるなと苦笑した。
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