【The third parts】     ―Double action―

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 母を尋ねて三千里。いや、統括委員長探して三千里といったところか。椿山 薫は朱灯梛 麗葵を捜索しているも一向に見当たらない。  それもこの生徒教師含めて1万人の収容を誇るただ広い大協会聖域を虱潰しに捜しての結果だ。  しかも、虱潰しに潰していった結果、薫は裏門に現在たどり着く。  段々、本当にこの大協会聖域の中にいるんだろうかと疑いの心を持っていた中、突然薫の尻が震えた。 「うぉ―……ッ!! っと、びっくりしたー。そうだったな今年は持ってたんだった。人とかいたらこのリアクション恐ろしく情けないな、はは……」  薫の尻で震えたのは携帯端末の着信を告げるバイブレーション。マンネリの如く待ち合わせ場所を間違える薫の母こと由里奈を今年こそはどうにか誘導して昼食にありつくために、普通は駄目なのだが、携帯端末をポケットに忍ばせて視覚や聴覚などの魔術を施してバレないようにしていたのだった。  薫は自らのズボンのポケットに手を伸ばし、それを取り、ディスプレイに表示された着信先を確認する。 【着信 11時59分 崎許 蓮華】  フルネームで登録されたその意外な名前を確認して、薫は思わず驚く。それもその筈、まず登録した記憶がない上に、番号を教えた記憶もない。それにあちらがわざわざ自分に直接かけてくる用事なんてものに見覚えはなく。 (一体なんなんだよ…………)  とりあえず、仕方がないので、ボタンを押して、掌に伝わる振動を停止させる薫だった。
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