放課後

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放課後

体育も終わって、部活も終わって。 いつも通り、帰路についたんやけど。 無言。 やっちゃんと二人、なんやで。 あーぁ。こんな、苦しい空間やったっけ? なあ、やっちゃん。遠いなあ。 「……、…」 口を開くものの、声にならない。 辛い、で? そんなのって、寂しいで。 赤信号、あたしらは隣に並んで無言。 何か、話そうや? 仲直りのチャンスなはずやのに。 言葉が出てこん。 いつの間にか、青になってん。 早いなあ。何も言えへんやん。 仲直り出来へんやんか。 信号の、阿呆。 あたしの阿呆。 「なあ、やっちゃん、」 横断歩道の真ん中、やっちゃんを引き止めてみてん。 手ぇ引っ張って。 あ、信号が赤になったみたいや。 やけん、今はそんなこと、気になんかしてられんねん。 はよ、伝えんと。 これ逃したら、もう、あかん。 「あたしは、やっちゃんとな、」 クラクションの音がして、トラックが目に入る。 ゆっくり、やで。 ほんまにゆっくりになるんやな。 不思議と怖ないで。 あぁ、やっと。やっちゃんに伝えられるんやな。 ありったけの力でやっちゃんを押す。 やっちゃんの目が大きく開かれた。 おもろい顔やな。 なんて、あたしもおもろい顔なんやろな。 「大好き、やで」 最期くらい笑顔やろ。 やないと、やっちゃんが安心出来へんやろ。 やから、やっちゃん、あたしの分まで、笑顔でいてな。 大好きやで。 最後までごめんて言えへんかったなあ。 あんな、仲直り、したかったで。
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