戸の向こう

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戸の向こう

「なあ、そう思わん?うち、やっちゃんのあーゆーとこ、嫌やわぁ。何かさ、ばかにしとんの、って思うねん」 や、思わんで。 せやけど。 「おん、そうやな」 やって、あたしは阿呆やねん。 否定、出来へんねや。怖いんやて。 ほら、阿呆や思ったやろ。 ええねん。 やっちゃんに、ごめんは言うてやれんからって、八つ当たりやんなあ。 戸の外、きっと、やっちゃん居んで。 もう、来る頃やもん。 さて、やっちゃんに聞かせたろ。あたしとは、仲良くしたらあかん、て分かるように。 「やっちゃん、」 あたし、何て言うつもりやったんやろな。 「おはよーうさんっ」 笑顔のやっちゃん。 いっつもみたいに入ってきてん。 ただ、隣があたしやなくて、ふーなだけ。 何も、何もおかしないで。 そう、何もや。 誰も気付かん。 やっちゃんの隣があたしやない、て。 ふーでも、あたしでも、変わらんのやね。 みんなは。 分かっとるで、やっちゃん。 悲しいんやろ。 元気な時は、そういう時やもんな。 幼なじみやで。 分かるっちゅうねん。 やけど、誰も気付かへん。 あたしだけ、や。 こんな風になってまで、まだ、やっちゃんのことが好きやねん。 やけど、仲直りて難しいんやね。 いつでも、本当のことが言えへんねや。 寂しいなあ、辛いなあ。 何やねん。 大好きやで、やっちゃん。 やけん、ごめんは言えへん。 不器用やな、あたしらは。
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