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「……ふぅ」
俺は荷物を邪魔にならないような所に置いた。
リビングは毎日掃除がされているのか、目立ったゴミと言うものは無く、とても綺麗に見えた。
リビングに視線を巡らす。テレビ、ソファ、テーブルと、日常で使う代表的なものの他に、花瓶、水槽などといった、目の刺激になるようなものまで置いてある。
「……ん?」
ふと、テレビの上においてあった写真立てに視線がいった。
俺は近づいていき、その写真を覗いてみる。
先ほどの京子さんと、その夫であろう人物……それからその間に入って、二人の子どもが手でVサインをしている元気そうな姿が写っていた。
微笑ましい光景だなぁとは思うのだが、この時一つの疑問が俺の頭を過ぎる。
「……これ、俺にそっくりだ」
そう、Vサインを取っている二人の子どものうち、一人の子ども……その子が少し俺に似ているのだ。
何故だろうか……俺は此処に居たという記憶は無い。勿論、記憶喪失になったというとも聞かされていない。
だとしたら、これはドッペルゲンガーなのか? だとしたら俺、死ぬんじゃね……? あれ、でもドッペルは直接会わなければ大丈夫だったっけか?
「………………」
止めだ。現時点で、この写真に写っている子どもが俺だという考えは早計だろう。
俺はソファに座り込んだ。体が沈み、電車での長旅が癒される気分になる。
家から徒歩で15分で最寄り駅に向かって、そこから2時間半電車に揺られ、駅から此処まで10分ほど……約3時間の旅になる。
『旅』としては、短い方だとは思われるが……俺にとっては遠出自体あまりしないので、体がついていかない。
「……あれ、それにしても京子さん遅いなぁ……」
あれから10分が経過するが、一向に京子さんの姿が現れない。
何かあったのだろうか。俺は気になってソファから立ち上がると、階段の方から足音が聞こえてきた。
「あの~、京子さ――――
「………………」
京子さんは俺を華麗にスルー。
そしてリビングに繋がっている台所へと向かい、寸胴鍋を持って戻ってくる。
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