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宿泊研修が終わった頃からちょくちょく気になる。
それは廊下ですれ違いざまだったり、授業の後の教室だったり
何でこうも目が合うのかと大悟は考える。
そして決まってそれは、悲壮感漂う視線。
張り付いた笑顔の奥の瞳が泣きそう。
三好達と無駄話をしながらもつい気になって
大悟は席を立って教室の入り口に足止めを食らってる視線の主の元へ向かう。
瞳の主は近づいてくる大悟を見て控えめにホッと息を吐く。
「先生、ちょっと話があるんだけど」
抱きつかんばかりの女子と三浦先生の間に強引に割って入って、三浦先生の腕を取る。
「谷川、何?」
心なしか、三浦先生の声が弾む。途端に瞳がキラキラしだす。
子犬みてぇだな…
大悟は笑いそうなのを我慢。
「うん、ちょっと大事な話。もう、用はすんだろ?」
低音で咬まして女子に一瞥くれて
睨みを利かせれば
「う、うん…」
女子は大人しく引き下がるしかない。
大悟はどんどん、廊下を進む。
階段にさしかかって、人気もなくなった所で
「一々相手してたら、疲れるでしょ?」
笑いながら大悟が振り向いた。
「え…」
後ろをついてきた三浦先生は、なんで分かったの?とでも言いたげな表情
あんなに助けを求めて、こっち見てた癖に
「…もしかして、気付いてない…?」
大悟は眉間にシワを寄せた。
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