1306人が本棚に入れています
本棚に追加
三浦先生は、目をパチパチさせて大悟を見つめる。
瞳が何か考えるように揺れて
暫し沈黙。
｢あ…、で、話って？｣
おもむろに三浦先生が口を開く。
｢特にないよ…？｣
大悟は苦笑い。
｢え…？そうなんだ？｣
そう言って、また考え込んでいる
なんか、面白い。
この人色々微妙にズレてる
大悟は、ニヤニヤ笑い出す。
｢あ…！そういう事？…ああ…そっか…ありがとう。｣
やっと気付いて三浦先生は、はにかんで笑った。
｢先生、鈍い？｣
｢…かも｣
｢先生なんだから、バシッと言えばいいじゃん？｣
｢谷川…女の子って、後が恐いからね。｣
三浦先生は暗い調子でボソリと呟く。
｢…そうかもしれない。｣
大悟も過去に思いを巡らせて、ゾクリと身震いする。
｢俺、口が下手だから上手く立ち回れなくてさ｣
｢みたいだね。｣
見た目は綺麗で、何でもソツなくこなせそうに見えるのに
そういえば、球技大会の時、ボールを顔で受けてたっけ
｢でも、これからは谷川がいるから安心だ。｣
三浦先生は嬉しそうに大悟に微笑みかけた。
｢アハハ…｣
なんでそうなっちゃう訳？
大悟は困ったように笑った。
考えてみれば、そうそう視線なんて合わないもので
それは大悟も三浦先生を見ていたって訳で
もしかしたら
無意識にでも
三浦先生の方が先に、大悟の視線に気が付いたのかも知れないって事
二人ともまだ知らない。
･
最初のコメントを投稿しよう！