春がくるまで

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長男はおっとり優等生で都会で爽やか大学生 次男はグレてヤンキー、駆け落ちして行方知れず 三男は単細胞の直情型 今日も口で売られた喧嘩を拳で買った。 谷川大悟 中学三年生 「高校生相手に殴り合いの喧嘩…お前は…」 放課後の薄ら寒い生徒指導室 「もうすぐ受験だぞ?こんな大事な時期に何考えてるんだ…?」 年配の指導教員はため息をつく これが一度や二度ではないからだ。 「どんな時期だろうが、関係ない。我慢出来なかったからだ。」 困ったような教員の視線に毅然と、当たり前のように言う。 「ハァ…谷川、お前は頭もいい、クラスの人望も厚い。正直で正義感も人一倍だ…。唯一の欠点は、その短気だ。」 気が短い、その通りだ 正義感が強い分、曲がった事は許せない。 恵まれた体格と、大人びた容姿。 年上の女子高生にも良くモテた。結果、やっかみから絡まれて、手がでる。 「小さな事に構けてると、大事なものを見落とすぞ?」 諭すように年配の指導教員は大悟の肩を叩いた。 「はい…。」 それから大悟の母がやって来て、何度も何度も頭を下げた。 その姿を見る度に、後悔する。 二人で教室を出て、母が先に立って歩く。 学校の校門を出たところでくるりと母が振り返った。 「喧嘩の原因は…?」 「慎兄の悪口言われた。」 「…なら、許す。今日のご飯は何がいいかしらね?」 母は朗らかな笑顔で大悟を見上げる。 「すき焼きがいいな。」 無邪気に笑って答えた 慎兄はこの辺では有名なヤンキー 去年、高校在学中にバツイチの子持ち女性と駆け落ちした。 慎悟の弟 それだけでからかいの種になる。 「慎兄は悪い事はしてない。」 「そうね…」 母は寂しそうに視線を落として小さく微笑んだ。 ・
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