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入学式
めでたく大悟と由良は同じ高校の門をくぐる。
玄関で上級生達から歓迎を受け、クラスへ案内された。
由良とはクラスが違った。
「んじゃ、後で」
軽く手を振って廊下で別れる。
各教室前の廊下に出された即席の受付で、職員が保護者から書類を受け取り、代わりに入学のしおりを渡している。
大悟のクラスでは、綺麗な顔立ちの青年が、上品な笑顔で受付けしていた。
母親達は一様に瞳を輝かせて青年を見ていて
通りがかりの新入生や上級生もそれは同じで、用もないのにウロウロしている者もいた。
あれも先生?
若すぎないか
大悟はチラッと視線を移して不思議に思う。
教室へ入って胸にお祝いの花をつけられて、席に座って見渡すとチラホラ知った顔が見える。
「諸君、入学おめでとう。」
担任は年配の顔色の悪い、柔和な顔つきのおじいちゃん先生
挨拶もそこそこに廊下に五十音順に並ばされる
体育館の外の廊下で待たされて
かったるくて退屈なセレモニー。校長が話好きの話し下手だったら最悪。
そんな事を考えた
「君、ちょっと待って」
大悟は後ろから肩を叩かれて驚いて振り向く。
さっきの綺麗なお兄ちゃん
「おれ…?」
まだ何もしてないし
キョトンとしていると
「苦しいだろうけど、式が終わるまで我慢して」
大悟の首元へ長くて綺麗な指がスッと伸びる。
学生服の一番上、外すのが癖になっていた。
されるがままに大人しくして首は少し上げて視線は下に
背丈は同じくらい、微かに傾いでしかめた顔
睫毛が長くて、鼻筋が通ってて、近くでみても人形みたいに綺麗
怖いくらいだ。
不意に瞳だけが動いて視線があった。
不躾にジロジロ見過ぎたか?
内心焦っていると、見透かしたように一瞬、妖しくニコリと笑った。
大悟は訳も判らずドキリとする。
「はい、いいよ。」
胸をポンと叩いて、先ほどとは違う控え目な笑顔を向けた。
「ありがとうございます。」
彼が誰なのかはすぐに分かった。式の最後に新任紹介で挨拶をしたのは
「三浦英明、数字担当です。教師一年目、皆さんと同じです。よろしくお願いします。」
にっこり微笑んだ。
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