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式が終わってから教室でHR 担任はおじいちゃんの真田先生 後ろからついてきた三浦先生は副担任らしい。 「おじいちゃんと孫…?」 聞こえてきて、クスリと笑った。 これからの高校生活の注意事項や予定を確認した後 「んー、後、忘れてる事はないかな…」 確認するように、真田先生が教室の隅の方で佇んでいた三浦先生に話を振った。 「大丈夫です。」 「うんうん、じゃあ、三浦先生からも何か一言。」 真田先生はおいでおいでと手招きする。 「諸君、三浦っ…ちでかず先生の挨拶です。」 滑舌が悪いのか入れ歯の調子が悪いのか 前に一歩踏み出した三浦先生は、目を見開いて動きが止まる。 大悟達は笑いたいけど、何だか真田先生に悪いようで笑えない。 「三浦っ…ちでかず先生、もっと前へ」 ちでかずってなんだよ ちでかずって… 名字の後で一拍おくから益々おかしい。 しかも、ホントはひであきだ。 みんな突っ込みたいけど突っ込めない。 生徒たちは鼻をヒクヒクさせたり、肩を震わせ各々堪える… 「あの…、み、三浦…です。よろしくお願いします。」 三浦先生もどんな顔をしていいか分からぬ様子。 「三浦せんせー下の名前はー?」 後ろから、お調子者が声をかけた。 なんて、言うかな? ちょっと注目 「…真田先生が仰った通りですよ。」 もう言わないで上げて 教室を優しい眼差しで見渡して、小さく人差し指を唇に当てた。 生徒たちも、その笑顔でホンワカして、わかったよー、みたいな空気になって、和やかにその日は終わる。 「高校の先生ってもっと怖いのかと思ってた」 「諸君!だってさ。真田先生って昔の先生っぽくていい感じ。」 「なんか、ホッとしたぁ」 口々に、色々な感想を言いながら帰途につく。 「二人ともおっとりしてそうだよな…」 大悟が呟く 「君には、良いんじゃない?短気な谷川には」 同じ中学の同級生が、ニヤニヤする。 そうかもしれない、少なくとも、真田先生と三浦先生とは喧嘩や殴り合いはないだろな 誰が決めたか知らないが、ナイスな選択だ 「…三浦っちでかず」 ボソッと一人が言って 不意を突かれて、周りは爆笑する。 「ヤメレ…」 次の日から三浦先生は三浦っち 有りがたくない渾名がついた。
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