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誰かと誰かのオタマジャクシと卵が何億何兆分の1を何十何百の行為を地上のアダムとイブが夜の営みをへてこの世に生まれた一人へ。 おかえり?ただいま?否、この国では"やぁ、初めまして"かな。 初めましてとバイバイを繰り返す世界にようこそ。 過度な喜びも多感な絶望もしないで。 羊水が満たす膣の中はこの世でもっとも清く安全な拠り所だよ。安心して。 ああ、そうだひっかき棒が膣の中に入らないことを祈るばかりです。 今は一人の声は誰にも届くことのなく膣の中でこだまするが その産声を聞きたい誰かが一番近くにいるからもうすぐ待っていて。 初めてましての瞬間はこの世に生まれた罪も哀しみも憤怒もまだ見ぬ歓喜も全部含めてバンザイしながら叫んで。 それが誕生した証だよ。 体を動かせることを知った一人は暇潰しがてら僅かに自由の利く足を動かした。 返ってきたのは膣の外の肉体距離0センチの誰かからの温かなぬくもり。 瞬く間に成長した一人は膣の中から外の世界の鳥や虫、汽車の発車音、そして見たこともないたくさんの似た声帯の声を聴いていた。なかでもよく耳にしたのは一人の数センチかそこらの距離にいる君をこの世で一番愛す者の声。 もうすぐ一人の声を聞きたいモノたちが増えるよ さぁさ、もうすぐキミの全てを無くす旅が子宮を突き破って始まるよ。 愛とも暴力ともつかぬ必ず死ぬ人の生を必死に生き抜いて。 渇くことのない産声と涙に濡れたその顔を280日間見守り続けた大切な人に見せてあげて あと、鉄棒をいっぱい練習すればキミはヒーローになれて、原発はキミのすぐ近くに埋めて置くよ 完。
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