11 棗Side

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  は……? え、なに……? ……逃げ……って……? 意味のわからないその言葉に、俺は戸惑い、兄貴に視線を送る。 「……まったく、本当に弱ぇな。お前ら、2人は」 お前、ら……? 2人……って? 思考が混乱を極めていく。 なに? なんのこと? 兄貴は、俺と、誰のことを言っている――? 兄貴は俺の戸惑いと混乱に満ちた視線を受け止めると、忌々しげにチッと舌を打って。 「わからないのか? 本当に?」 「わかんないよ……」 俺は兄貴のキツい言い方に、言い様のない不安に襲われる。 なんで……? なんで、兄貴まで怒ってんの……? 俺、別に、なにも……っ 「お前、逃げてるよ。皐から」 コ ウ か ら ――? 俺は反射的に腕を掴んでいた兄貴の手を振り払うと、悲鳴に近い声をあげる! 「違う! 違う! 逃げてなんか、いない! 俺……っ、俺、は……っ!」 「違う? なにが違うんだ」 「逃げてなんかいないっ! 俺は常に、皐のことを考えてる!」 「はっ! 『常に皐のことを考えてる』ねぇ?」 兄貴は俺の言葉に嘲笑し、素早く立ち上がると、俺の胸ぐらをグイッと掴みあげる! 「ならば、聞いてやろう! 長谷川さんが『大事な話は、皐のことだろう』と言ったとき! お前はなにを思った!」 「――――ッ?」  
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