11 棗Side

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  兄貴の言葉に目を見開き、そのままなんの言葉も出さずに居ると、兄貴は俺の隣に腰を下ろす。 「考えろ。よく考えろ。お前は今、誰を想い、なにをすべきなのか。お前は、なにが知りたい? なにを伝えたい? なにがしたい?」 兄貴のとても優しい声が隣で響くと、俺は戸惑いつつも、思考を巡らせた。 確かに、俺は…… 兄貴が大事な話があると言ったとき、『大事な話』という響きに少なからず不安を覚えた。 でも、それはすぐに消えて……。 もう少し考えれば、皐のことだと、容易に想像はついたのに。 考えるのを、やめてしまった。 それはきっと、気付きたくなかったからだ。 長谷川さんが、『大事な話って、檜嶋さんのこと』と言ったとき。 俺にとってそれは、気付きたくない事実だったはずなのに、そのあとの兄貴の言葉に突っかかることでその言葉を流したんだ。 それは明白な逃げ。 でも…… でも……っ! 皐のことを煩わしいだなんて、1度も、微塵も思ったことはない! それは、絶対! 今、この状況でも! 絶対の自信を持って言える! だから……俺は…… 「兄貴……。俺、皐と……」 「……別れたい?」 兄貴の言葉に、首を振り涙を散らす。  
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