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俺は皐を失えない!
だから、皐に俺を失わせたりしない!
俺は皐を手放したりなんかしないし、手放させたりもしない!
絶対に!!
思わず拳をギュウッと握り、ギリリと歯を食い縛る。兄貴は俺の顔を覗き込むと俺の鋭い視線を受け止め満足そうにニヤリと笑う。
「いい顔になったじゃねぇか。じゃあ、棗。もう1回だ」
俺はその言葉にパッと顔を上げると、目の前には兄貴の人差し指がビシッと立っていて。
そして兄貴は人差し指でこめかみの辺りをトントンとつつくと、顔から笑みを消した。
「考えろ。棗。お前は今、誰を想い、なにをすべきか。お前は、なにが知りたい? なにを伝えたい? なにがしたい?」
「…………俺、は……」
俺は、一片の陰りもない真実が知りたい。
皐と、水樹さんの関係の真実が。
敦之からでもなく、水樹さんからでもなく、皐の口から真実を知りたい。
そして、俺の気持ちを伝えたい。
綺麗事じゃない。溜め込んでいたことも、包み隠さず、全部。
それを皐がどう思うかなんて、そんなのはわからないけれど、それでも全部を伝えたいって思う。
「…………」
皐を想い、皐のことを考えて、皐に想われ、皐に俺のことを考え欲しい。
そんで、したいことと言ったら、まずは1つだけ。
あとは、後々考える。
欲望なんて、後から後から出てくるものなんだし。
俺は、ズッと鼻を啜ると、兄貴の目を真っ直ぐ見る。
そして、カッコ悪いけど鼻声で……だけどハッキリと言った。
とりあえず、俺は、これだけ。
「皐と、仲直りしたい」
ただ、これだけ。
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