記憶

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そんな僕に彼はいつだって声をかけた 「また一緒に走ろう」 「お前なら絶対―――」 期待と悲しみに膨らむ彼の声 僕はだけど知っていたんだ 表彰台の僕より上に いつも彼がいた事を 彼女の愛は いつも彼に向けられていた事を 天ハ人ノ上ニ人ヲ創ラズ 昔の偉い人が言っていた じゃあ教えて欲しい 僕はいつ お兄ちゃんの下から抜け出せるのかを 大学進学を期に 兄とは離れる事にした あの優しい声は僕にはもう 届かない
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