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立ち尽くすあたしに向かって歩く山田キョー介。逃げたいのに何故か足は動いてくれない。
「あ…」
いつの間にかカラカラになった喉が引きつり、声が擦れて出てきた。おかしい。何かがおかしい。
山田キョー介のまとう空気が怖いと思うなんて、どうかしている。だって彼はあたしと同じ高校生で、人間で……
「あの人が望んでいらっしゃるのだからしかたないよね。」
「……やめ、」
山田キョー介はあたしの頭を掴むと少し悲しそうな顔をして、「いってらっしゃい」と笑ったのだ。
そしてあたしの意識はそこでブラックアウト。一瞬の闇を迎え、少し重たい目蓋をゆっくりと開けると視界一面緑、緑。そうあたしは森にいたのだ。
ああ、山田キョー介。
あんた何者だよ。
あたしをどうしたんだよ。
泣きたくなるのを堪え、今はもういない山田キョー介に悪態を吐いた。
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