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「転校手続き、終わったから。なんでも今度の学校、吹奏楽部の名門らしいわよ?あなた、せっかくだから・・・」
「やめてくれ!」
雅人が声を張り上げた。
「もう音楽はやらない。決めたんだ。聴くことはあっても、もうステージには上がれない。自分の音楽を奏でられない演奏家なんて、認めない。」
香織は言い返さなかった。本当は雅人が音楽への未練に満ち溢れていることくらい、母親にはわかるのだ。
「そうそう、父さんからメッセージ。あなたの目の前じゃ恥ずかしくて言えないからって。」
香織が静かに言う。
「演奏家は自分を表現するもの。苦しいときも辛い時も自分の姿を音楽に託すものだ…だってさ。」
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