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岩崎が話終えると同時に川島が待ってましたとでも言うように、颯爽とステージに上がり、幕が開く。
小澤の姿はすぐ見つかった。中央より右の前から二列目。金色に輝くサックスを構えている。
そして、川島のタクトが振られると同時に、勇壮なマーチが聞こえてきた。
雅人は知らなかったが、流行りのJ-POPをアレンジしたらしい。
雅人は意識を集中させ、慎重に小澤の奏でる音色を感覚を研ぎ澄まして探っていく・・・。
金管楽器の音色からサックスを探し、小澤が担当するアルトの音を探す。
そこまでたどり着いたら、次は視角。
隣の女子生徒がミスをした。すぐさまその音色を嗅ぎ付け、マークから外す。
同じ種類の楽器と言えど、一度違和感を感じてしまえばすぐにわかる。
しかしこれを「音を探す」作業から外すのは困難であり、少なくとも学校では雅人にしかできないことだった。
そして、雅人は小澤の奏でる音色にたどり着く。
優美かつ繊細。
多少覇気に欠ける部分があるが、雅人のそれとはまた違う、優しい音色だった。
レベルとしてはまだまだだが、個人として相当なポテンシャルを持っているのが見てとれる。
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