はじまり

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頭の中でおおよそのレビューをまとめた雅人は、全体の演奏を聞きに入る。 さすがに全国区というだけあって、全体のバランスがとれ、見事なハーモニーがとれている。 その時、トランペットの一人の少年が席を立った。ソロパートだ。 力強く、一音毎に心まで響いてきて、揺らす。 奏者の顔には見覚えがあったが、思い出せない。 「やっぱ津田は凄いよな。なぁ、そう思うだろ?」 後方で男子が喋っている。 思い出した、同じクラスの津田博渡(ツダヒロト)じゃないか! 吹奏楽部と知らなかっただけに、少し申し訳なかった。 ソロが終わり、拍手と歓声が沸き起こる。 雅人も素直に拍手した位に、津田は少し照れたような顔で座った。 ソロは初めてだったのだろう。 しかし、聞いていると本当に楽しくなり、自分もサックス片手にあの場で演奏できたら、とさえ思ってしまう。 自分が再び楽器を手にとっている姿を思い浮かべると、ついつい右手が疼いてしまう。弾きたくて仕方が無いように・・・ えっ・・・? みぎ・・・て・・・?
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