17人が本棚に入れています
本棚に追加
頭の中でおおよそのレビューをまとめた雅人は、全体の演奏を聞きに入る。
さすがに全国区というだけあって、全体のバランスがとれ、見事なハーモニーがとれている。
その時、トランペットの一人の少年が席を立った。ソロパートだ。
力強く、一音毎に心まで響いてきて、揺らす。
奏者の顔には見覚えがあったが、思い出せない。
「やっぱ津田は凄いよな。なぁ、そう思うだろ?」
後方で男子が喋っている。
思い出した、同じクラスの津田博渡(ツダヒロト)じゃないか!
吹奏楽部と知らなかっただけに、少し申し訳なかった。
ソロが終わり、拍手と歓声が沸き起こる。
雅人も素直に拍手した位に、津田は少し照れたような顔で座った。
ソロは初めてだったのだろう。
しかし、聞いていると本当に楽しくなり、自分もサックス片手にあの場で演奏できたら、とさえ思ってしまう。
自分が再び楽器を手にとっている姿を思い浮かべると、ついつい右手が疼いてしまう。弾きたくて仕方が無いように・・・
えっ・・・?
みぎ・・・て・・・?
最初のコメントを投稿しよう!