翼をもがれた天使の嘆き

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自然に、涙が出てきた。 この家に今、雅人以外の人はいない。 父は次の公演の準備に向かったし、母は雅人の転入手続きで横浜市役所まで行っている。ついでに親戚などに挨拶回りに行くらしく、帰ってくるのは3日後だ。 ・・・そうだ、僕は逃げてきたんだ。 雅人は心の中でようやくそれを理解する。 片腕を失い、何もかも嫌になって、シアトルから日本の都市に。 学校が始まるのも4月からだから、時期的にも丁度いいということで、雅人は言われるがまま祖父母の家に近い横浜市舞海区に越してきた。
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