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一方、シンデレラはというと…
「あ、おじさんこんにちは。今日は何が安い?」
ルカたちの苦労も知らず、呑気に買い物をしていた。
シンデレラに聞かれた親父が、元気良く答える。
「お、シンデレラちゃんか。今日は茄子が安いよ!それで、またお城を抜け出してきたのかい?今頃、捜索隊が出てるだろうに。…また隠れてくかい?」
そんな親父の言葉に、シンデレラはちょっと考えるように顎に手を当てて言った。
「うーん、茄子か…。今が時期だし、いっか。じゃあ茄子下さい。それと…止めとくわ。おじさんに迷惑かかるし」
前回逃げてきた時は、親父の店を捜索隊が包囲して大騒ぎになったのだ。
…完璧な営業妨害だ。
もちろん、捜索隊を怒鳴りつけ、速攻で元凶である王子を殴り飛ばしに帰った覚えがある。
それでも匿ってくれようとする親父は、人が良すぎるとシンデレラはちょっと心配していた。
「ぶぁっはは!そうか。なら、はいよ!これは、おまけだ!今日は、城でまた舞踏会があるらしいから、馬車がよく通る。気をつけて帰れよ!」
そう笑いながら、林檎を一つ投げて寄越す。
「お♪良い林檎だね。また舞踏会~?…良くやるねぇ。あたしは、あんな風に踊るより食べる方が好きだわ。ありがとう、おじさん!じゃあね」
「おう!またな!!」
そうやって親父と別れてから数分後、シンデレラは捜索隊に見つかり、鬼ごっこの末、城まで強制送還された。
その際の負傷者は、三十人を越えたという事で歴史に残る鬼ごっこになってしまった。
…シンデレラ強し。
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