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プールの底に光の網が映る。ゆらゆら揺れている。
思いっきり吸い込んだ息の続く限り、私は魚。
水の中にいると、懐かしい心地がするのはなぜだろう。母の胎内に居た記憶の残滓だろうか。
息が苦しくなった。水面から顔を出し、ゴーグルをはずす。
やはり、学生時代のように長い時間の潜水は無理だ。
今度は、水に浮かび、そのまま水面を漂う。
ふいに、学生時代に頑張りすぎて意識を失い、ヒゲもじゃのオヤジ先生に人工呼吸されてしまった苦い体験を思い出した。
あれ以来、無理な潜水はしなくなった。
そうやって、一つ、また一つと、無理をしなくなっていった。
やる前から結果が見える気になって。
あまり、がんばらなくなっていった。
もうひと泳ぎして帰ろう。
久しぶりの有給休暇。
プレゼンの失敗を、みんなにもう一度謝って。
また、がんばらないと!
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