9人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
監視員のバイトは、我慢の連続。
なにしろ、夏休みの室内プールは、小学生ばっかり。
プールサイドを走る。
飛び込みをする。
シャワーで水遊びをする。
監視員に水をかけてくる。
「ねえねえ、おじちゃんなんさい?」
まだ大学生だ、俺は!
「水中ドリル回転するけん、見とって!」
なんだそれは!
毎日毎日ガキばっかり。
なかには10年後が楽しみな女の子もいるが……って、俺はロリコンじゃない!
我慢しろ、俺! 金が、金がいるんだ!
「あのう……」
プール全体を抜かりなくチェックしていた俺は、足元の声に視線を落とした。
うお!?
まさに奇跡。黄色いビキニのナイスバティ美女が俺を見上げていた。心の中で神に感謝しつつ、真面目な監視員の仮面をかぶりなおした。
「どうかしましたか?」
「いえ、アルバイトの人かな、と思って」
「え、ええ、まあ」
「どうして監視員を?」
家から近かったからです。と本当のことを言うのをためらわせたのは、彼女のかわいすぎる微笑が悪い。そうに決まっている。
「水泳と子供が好きだから、かな。子供が危険な目に遭うの、なるべくなら避けたいじゃないですか」
「そうなんですね!」
彼女の目が輝いた。
「かんしいんしちゃうな!!」
はい?
……もしかしてそれが言いたかった?
そのとき、5歳くらいのクソガキが走ってきた。
だから、プールサイド走るな!
「ママー、なにやってんの!」
「ん? もう終わったよ、そろそろ帰ろっか?」
手をつないで去っていく二人。
夏はまだ、始まったばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!