過去と今…

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その夢は…何故か、俺とその少女の名前だけを、曖昧にしていた。 まるで…そう…夢の中の俺が俺ではないかのように…。 その名だけを…曖昧に映し出していた…。 そんな夢だった。 ―――――― 「で…?続きは?」 「すまない…そこでいつも夢が覚めるんだ。」 「そっか………。」 しばらく沈黙が続いた。 その沈黙を終わらせるように、先に口を開いたのは、イタリアだった。 「ねぇ…ドイツ…」 「なんだ?」 「ドイツは… 神聖ローマなの?」 こいつは今…何を言った? 神聖ローマ? 俺が…? そんなわけないだろう! 言おうとしたが… 言葉が出て来ない…。 それでも、否定しようと、口を動かそうとする。 しかし、口さえ動くものの、喉から声が出て来ない。 どうしたものか…? 「ねぇ…ドイツ…いや…神聖ローマ?」 「…めろ…」 「ねぇドイツ…君は誰?」 「や…やめろ!!!やめろ!!!イタリア!!!」 「どうしたの?神聖ローマ…」 「やめろ!!!その名で呼ぶな!!!」 その直後、いきなり頭痛がした。 「!?」 一瞬だけ映る…あの夢と同じ庭…そこに…あの少女が―… 「っ!?」 「え…?ドイツ?」 「イタ…………リア?」 「え…………?」 イタリアは、いきなり名前を呼ばれて戸惑っていた。 「すまない…イタリア…」 俺はイタリアに謝った。 「ずっと待っててくれたのか…ありがとう…イタリア。遅くなってすまなかった…。」 「ドイ……ツ?」 「………。」 「神聖…ローマ?」 「なんだ?イタリア。」 イタリアは目に涙をためて、俺をみた。 それから、ニッコリとほほ笑んで、 「うん…。お帰り。神聖ローマ」 「ただいま…イタリア…。」 そんな挨拶を終えて、俺はイタリアとともに、その場をあとにした。 ―END―
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