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「……しょうがないでしょ。…………幽霊嫌いなんだから」
立ち上がりながら、後ろ半分の言葉は小さく、聞こえないように呟く
彼女はこの屋敷の雰囲気が、何か出そうな雰囲気が嫌いだ
それは幽霊が嫌いだからという事を証明している
彼女の生きている物に対する好奇心は尋常ではないが、死んだ物に対する恐怖心も尋常ではない
その性質が完成されたのは、彼女が幼少の頃
とある夜にそれらしき物を見て以来、夜になれば幽霊に対しての恐怖が大なり小なり付きまとうようになった
そんなセリスが夜中一人で家出をするというのは並大抵の勇気では実行は不可能
ラルクもそれを分かっていた
分かっていても、幽霊嫌いをからかわない程、彼はお人好しではなかった
「幽霊が嫌いなのに僕と一緒にいて良いの? さっき死んだんだよ?」
「……そういえば、そうね」
ラルクの言葉はセリスの脳内に天敵の存在を知らせる警報となって届く
彼女の顔にはうっすらとだが、冷や汗が流れ始めた
「どうするの? 僕、死んでるよ?」
話しつつ両手を広げた彼の影は不気味で、恐ろしく、禍々しい
その時、セリスには彼が死へと誘う死神のように感じられた
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