あいつ

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「ねぇねぇねぇ。 麻美子、どう思う?」 ホームルームが終わると、早速香が私の許へと訪れた。 この辺の展開などは、まあお約束だろう。 「どうって?」 「渡部君よ。 何かさ、ちょっとカッコいいよね。」 「そう。香のタイプって、あんな感じなの?」 「別にそうとは言わないけどさ。」 私の席から遥か右後方、興味本位の数人に囲まれる渡部を見た。 うん、別に悪くないよ? 筋肉質で、見るからにスポーツマンって感じで顔の造りも悪くない。 さしずめ、芸能人で言う所の○○○って感じだろうか。 伏せ字にしたが、別に他意はない。 誰もが思い浮かべるあの人だ。そう、あなたが想像したその人で合っている。 「でもさ、麻美子ってほんとそっち方面興味無いよね。 浮いた話どころか、男の子の話さえあんま聞いた事無いもんね。」 私だって仙人ではない。 何も全く興味が無い訳でもなく、別に生涯孤独で朽ち果てるつもりもさらさら無い。 ただ、今まで特に何かを感じる輩がいなかっただけの事。 うーん…その意味では興味が無いと見られても仕方ないのだろうか… でも、今はそれでも良い。 私の理想の男性、サモハン・キンポーを超える輩などそうそういるものではないのだから。 それをガツガツした所でどうしようもない。 「あ、でもさ、前にサモア人の話はしてたよね?」 …惜しい。  
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