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転校生渡部を話題の中心にしながらも、全体的には淡々と一日は流れていく。
詰め込み型の日本の教育事情に於いて、授業中特に個人の個性を見る機会は少ない。
また、それぞれの科目の先生方も初日から転校生をいじる事に気を遣ったようで、結局渡部の事はよく分からないまま午前の部が終わった。
そして昼休み。
お弁当を広げたり売店へと走ったり、皆思い思いに動き出す。
とりあえず今日のヒーロー渡部は、相変わらず物珍しがる者やお節介…いや、親切な者達によって賑やかなお昼を過ごせているようだ。
どれだけ娯楽性に乏しいクラスなんだか…いや、みんな人が良いだけだ。
何とも分かりやすいこのクラス。
多少演出めいて現実離れしている感はあるが、私は決して嫌いではない。
それはそうと、香がお弁当を持って私の席へとやってきた。
「麻美子ー、一緒に食べよー!」
「うん、いいよ。」
クラス全体が浮ついた雰囲気の中、このいつもの光景にホッとする。
私も鞄からお弁当を取り出し、机の上に広げると、香も向かいに座りお弁当をならべた。
「あー、お腹すいたね…え!?
麻美子、それがお弁当!?」
弁当箱を開けた私も絶句した。
そこにはロールケーキが詰まっていたからだ。
ゆうべ母に訊かれて私が答えたリクエストはロールキャベツ。
聞き間違えたのか、知らなかったのか…
どちらにせよ、母の腕的に期待はしていなかったが、この結果はある意味期待以上だ。
『お弁当のおかず』として、一切疑問に思わなかったのだろうか。
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