第五話

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気付けば玲は地面に倒れこんでいた。 薫の叫び声がやけに頭に響く。 目の前には玲の鞄を握った原付の男が小さくうつる。 「玲ちゃん!!」 薫が慌てて玲の肩を抱えると、やっと何が起こったのかが理解出来た。 ひったくりにあったのだ。 「玲ちゃん!大丈夫!」 何も答えない玲に薫は必死に問うが、答える事が出来なかった。 声が出ないのだ。 足も震えて立つ事が出来ない。 ただのひったくらで、その拍子にコケただけ。 必死にそう自分を納得させるが、玲の身体は恐怖による強張りを隠せず、みるみる顔面蒼白となった。
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