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気付けば玲は地面に倒れこんでいた。
薫の叫び声がやけに頭に響く。
目の前には玲の鞄を握った原付の男が小さくうつる。
「玲ちゃん!!」
薫が慌てて玲の肩を抱えると、やっと何が起こったのかが理解出来た。
ひったくりにあったのだ。
「玲ちゃん!大丈夫!」
何も答えない玲に薫は必死に問うが、答える事が出来なかった。
声が出ないのだ。
足も震えて立つ事が出来ない。
ただのひったくらで、その拍子にコケただけ。
必死にそう自分を納得させるが、玲の身体は恐怖による強張りを隠せず、みるみる顔面蒼白となった。
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