始まりの手紙

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蝋封に押された押印を崩さないように気をつけながら、夕希は封筒の封を切った。 封筒の中に入っていたのは、封筒と同じように色あせた一枚の便箋だった。 そこには、平仮名で「しなののくにで、おまちしております。」とだけしか書かれていなかった。 「しなののくに・・・信濃の国?確か長野の古い呼び方だった気がするけど、招待状・・・ってわけじゃないよね。」 一行だけの手紙を、夕希は何処か懐かしいその丸い小さな平仮名を何度も読み返した。 「長野か・・・、まぁ後四日あるし良いかな・・・。」 壁のカレンダーに目を移しながら呟くと、机に備え付けられた端末に指を走らせて行った。 部屋の窓から見える景色は、静かに冬に向かって流れ始めていた。
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