4/12
前へ
/20ページ
次へ
あ、分かった! あたしが見たことあると思ったのは…彼はあたしが入学して間もない頃に初めてそこのコンビニに行ったとき、 受け取ってすぐばらまいてしまったお釣りを一緒に拾ってくれた人だったからだった。 最近はコンビニに行くと彼はいつもパンのコーナーにいた。 そしてメロンパンを買うのだ。 だからあたしの中で勝手にメロンパン王子と名付けた。 でもきっと、メロンパン王子はあたしのことなんか覚えていないに違いない。 淡い期待を抱くこともなくただメロンパン王子を一目見るためにコンビニにできるだけ通うようになった。 ある日。 あたしは友達に呼ばれていて急いでいた。 だけどコンビニに行かないわけにはいかない。 軽く見たらすぐ出よう。 そう思っていた。 だけどメロンパン王子の定位置にいたのは見たこともないただのサラリーマンだった。 何かあったのかな… 風邪?単に遅刻?まさか事故? 嫌な方へとぐるぐる回る。 仕方ない、もう出よ。 レモンティーだけ買ってダッシュで目の前の横断歩道を渡り、 昇降口に入ろうとしたそのとき。 「あの、私…藤崎くんのことが…好きですっ」 藤崎くん?クラスにいたよーな名前…。 下駄箱の前にいるのは後ろ姿の藤崎くんとやらと隣のクラスの可愛いで有名な上野さんだった。 藤崎くんと言われても名簿にあった名字くらいの情報しかないし、顔も分からない。 「……ごめん。俺さ、他校に彼女いるんだ」 「そっか…。分かった、ごめんね」 「いや、気持ちは嬉しかったから。ありがとな」 …なんかヤバいよね、あたしここにいたら。 どうしよどうしよ… ……あ れ…? 藤崎くんって… もしかして。 上履きを取るときの横顔が見えた。 メロンパン王子…!?
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加