29人が本棚に入れています
本棚に追加
― ネェ、―
その時、"誰か"の声が聞こえた。
頭に直接
響くように、鳴るように
― 何処ニ帰ルノ?―
帰る場所?
そんなの決まっている。
私は、
あ、れ…?
思考はピタリと止まる。
そして、今度は懐疑が思考を埋め尽くす。
自分は何処に住んでいた?
何でこんなことが出てこない?
思考がショートする間にも"誰か"は聞き続ける。
― 誰ガ待ッテルノ? ―
お母さ、ん…とかお父さ…
― ソノ人ノ名前ハ? ―
っ…!
― ジャア、"貴女"ノ名前ハ? ―
「うっ……!」
途端、目眩と吐き気に襲われる。
何で……何でっ…!?
帰るべき所がわからない
自分を待つ親の名…顔すらわからない
否。
それらが本当に存在するのかすら自信が無い。
知っているのは自分の名だけ。
"アリス"
最初のコメントを投稿しよう!