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自分ハ誰? 自分ハ"アリス" "アリス"ハ、ナ…ニ…? キ モ チ ガ ワ ル イ 「イ、ヤ…アァア―ッ!!」 自分の名前しかわからない"私"。 そのくせ"アリス"の正体を知らない"私"。 絶望 虚無感 寂しさ 疑い 不安 負の感情に押し潰されそうになる。 が、 ― ぎゅっ ― 「アリス」 「ッ…―――!」 「落ち着いて下さい、アリス。」 狂いかけの私の耳に優しい声が響く。 不意に起きた出来事に思考はついていかない。 しかし、背中から感じる体温とその体温の持ち主の声は今安心するには十分だった。 「ぁ………」 「そうです、アリス。ゆっくり深呼吸して…。」 "誰か"の言う通り、深呼吸する。 ゆっくり、深く。 「わた、し………」 「アリス。」 声からして男の"誰か"。 その"誰か"は、頭に話しかけてきた"誰か"とは違う。 男はゆっくり話し始める。 「アリス…僕が、わかりませんか?」    
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